2011 Ironman Western Australia

2011年12月4日 日曜日 天候:晴れ
種目:Swim 3.8Km、Bike 180Km、Run 42.2Km
記録:12時間33分07秒 総合615位/1163人 55-59男女13位/41人

 Swim  1:21:441:21:44
T18:231:30:07
Bike6:17:367:47:43
T26:577:54:40
Run4:38:27  12:33:07


プロローグ~帰国 | レースダイ |

■12月4日(日)晴れ
レースダイ

2011-12-04 18:18
フィニッシュしました。最悪のタイムです。5時45分スタートで、遅くとも6時までにはゴールするつもりが、6時をだいぶ過ぎていました。正確なタイムは不明ですが、12時間30分を過ぎています。とんでもないタイムでした。ランのタイムも4時間半を過ぎています。やはり、練習不足と言うことでしょう。レース中に何度も反省しました。マラソンも走れないランナーがアイアンマンなど満足に走れるわけは無いでしょう。

 起床は3時。興奮しているのか、寝た時間が早かったからか、何度も目が覚めた。野球の古田が出るというのが気になっていて、何回か古田の夢を見た。実際のところ、彼は出場したのだろうか。いくら70.3のレースを完走したからといって、にわかな練習でアイアンマンを完走できるほど甘いものではない。レース当日、私は古田らしい姿を見なかった。

 自分の部屋で、日本から持ってきた赤飯を食べる。部屋には電子レンジがあったので、昨日作っておいた赤飯を温めた。3時半を過ぎた頃に会場に出掛けて、バイクのセッティングをしてきた。特に変わった事をする訳ではない。いつもの通り、タイヤの空気を入れて、ボトルに水を入れて、補給食の準備をするだけ。土曜日のバイクセットの際に自転車カバーをしておいたが、きれいに外されていた。100円で買ってきたカバーはきれいに畳んでそばに置かれていた。どういう事だったのだろうか、海外のレースはよく分からない。周りのバイクにはカバーを掛けている人は少ししかいなかった。シートなどにカバーを掛けている人はパラパラといた。それらのカバーは外されたかは分からない。

 会場はこのホテルからすぐそば。朝のバイクの準備はあっという間に終わり、部屋に戻ってきたのは、4時前だった。ボディマーキングもない。レース当日の慌ただしい動きは何も必要ない。こういうレースが望ましい。

 ウェットを着込んで、再び部屋を出たのはスタート1時間前の4時45分頃。ゴール後に受け取る荷物を預けて、スイムスタートに向かう。スイム会場ではまだ砂浜に人を入れてくれない。プロの選手だけが一部のエリアに囲まれて待っていた。プロの選手も自由にアップができる訳ではなく、ひとりずつ選手紹介のあと海に入っていった。5時半、プロの部がスタートし、そのあとエイジグルーパーは海に入るのが許された。15分もアップの時間があれば十分である。ちょっと海に入って軽く泳いできた。風が少し吹いているがそれほど問題ではない。若干の流れが有るようだがそれも大した問題ではない。水温も低くなく泳ぎやすそうだった。私はコースの右端からスタートすることにした。スイムの得意な人たちに先に行って貰うことにしよう。5時45分、レースがスタートした。

 前の選手が泳ぎだした後、マイペースで泳ぎ出す。スイムコースは特に難しい事など無い。ただ単にジェッティの先まで行って戻ってくれば良い。そのために私の周りではバトルなどは無かった。右端から出て、まっすぐジェッティの先端を目指していく。周りの選手に付いて行けばいいと思っていたが、みんながそんな風に思っているのか、まっすぐ先に向かっているのでは無いようだった。私は泳ぐとき、左にずれて行く癖があるのかと思っていたら、今の泳ぎはそうでもないようで、どうやら右にずれていく様に変わっていた様だ。なので、どんどん目標からは遠ざかって行く様に見えた。ジェッティの先端の小屋を見定めながら、何とか左の方に方向を修正して行った。かなり遠回りをしてしまった様に感じた。また、潮の流れも沖から岸へ、または左から右にあるような感じで、かなり時間も掛かった気がした。

 ジェッティの先端が見え、さらにその先のブイも次第に見えてきてひとまず安心した。やっと半分が終わった。ずっと右側を泳いできたくせに、ブイを回るときはブイのぎりぎり下を回って、もう一つのブイを目指した。次のブイまでは100mくらいだったか、それを回れば後は岸まで行くだけ。今度はジェッティに沿っていけば簡単だろうと思っていたが、やはりまた右にずれていき、気が付いたときは、ジェッティからはかなり離れたところを泳いでいた。

 気を付けて左の方に寄るようにしていると、やっと同じ様なレベルの選手に出会った。ここまで来て同じ様なところを泳いでいるのだから、力の差は無いはずである。キャップに大きくゼッケン番号が書いてあるのがよく分かる。1000番台の番号で私より少し若い。とりあえず彼と一緒に泳いで行こうと思う。なかなかいいペースメーカーが見つかった。暫く彼と泳いでいると、慌ただしい泳ぎをしている、いかにも若そうな選手が近づいてきた。こういう泳ぎをする人からは離れるに限る。しかし相手も離れない。仕方ないので、周りの様子を見るために少し泳ぎを止めて、若い選手からも離れた。はじめの目標選手も見えなくなってしまった。しかし潮の流れもいい感じで、折り返してからはだいぶ速い様に感じたので、もうひとりでも安心だった。

 ゴールが見えてきた辺りから小便をしたくなってきた。泳ぎながらやってみようと試すがなかなか出ない。仕方なくそのまま泳ぎ続け、岸に上がってからシャワーの下でする事にした。その時はそれで十分だったが、バイクに乗るとすぐにまた催してきた。このバッセルトンの大会ではトイレは必ずエイドにあるトイレを使う事が義務化されている。それ以外でするとペナルティが課せられる。

 スイムはまずまず、極端に悪いタイムでなかった様でひと安心。シャワーでゆっくり用を済ませて次のバイクへと向かう。バイクバッグを自分で取って着替えに入る。サンスクリーンを塗ってくれる。冠スポンサーの「SunSmart」とはどうも、日焼けを防いで皮膚ガンを減らそうという団体の様な気がする。一般の企業では無い様だ。企業のコマーシャルなども無く、しきりに日焼けに対する注意を聞いた。オーストラリアは紫外線が強いので、注意するようにと言うメッセージの様だ。実際に日中の日差しは強く、サングラス無しでは街中を歩く事などできない。たっぷり日焼け止めを塗って貰って、バイクに向かう。当然腕には日焼け止めのアームカバーをしている。朝方はまだ寒いくらいの陽気だったので、アームカバーがあってちょうど良かった。

 バイクコースは、1周60キロ、スタート地点のロータリーも含めて4ヶ所の折り返しがある。バッセルトンの街を出て10キロほど走って左折。最初の折り返しへ向かう。風は東からの風、向かい風になる。出だしは気持ち良く進んでいる。向かい風だが30キロ近くは出ている。左折してから折り返し点までは6キロ程か。途中に1ヶ所、15キロ地点にエイドがある。この道はメインの道路ではなく生活道路のような道。きちんと整備されている道路ではない。アップダウンを感じる唯一のコースでもある。この部分は下見には来なかったので、最初は様子見。左側は海、右側は牧草地帯のような感じ。たまに民家があった。もちろん畜産農家だろう。向かい風のなかを折り返し地点に向かう。宮古島ほどの景色ではないが、何となく東平安名崎を思い起こさせる。

 この先の折り返しまではあっという間に来てしまった気がした。まだ1周目で体も軽い。向かい風もそれほど強い感じはしない。折り返してからは追い風。気持ち良く進んでくれる。折り返しの部分が終わって、また元の道路に戻る。そこまで湿地帯の中を走ってきた道路は、森林地帯に入っていく。森林地帯と言っても山は無い。湿地帯が乾いてしまった様な感じで、土地は平らである。走っていて気持ちがいい。この先、第2折り返しまでは金曜日の下見の時に走行している。森の中を気持ち良く走って行く。こちらが折り返しに向かっている中、プロのアスリートはどんどん戻っていく。

 最初の折り返しが終わってから2キロほど走って左折。ここから11キロほど先が第2の折り返し地点。ハイウェイの直前まで走る。暫くは路面も良いのだが、半分ほど走った所から荒い舗装の路面になる。走っていて気持ちのいいものではない。じっと我慢するしかない。この荒い路面に対応するために、今回はレースでは初めてバイクグローブをはめてみた。グローブが無い時と比べてどうなのかははっきり分からないが、多分、それなりに効果はあったのだろうと思う。所々滑らかな路面のところがあるとホッとする。ニュージーランドもこの様な舗装だった。たまに滑らかな舗装の上を走ると、鏡の上でも走っている様にスムーズに走っている。きっとスピードも違っているだろう。

 今回のバイクで気を付けた事は、補給の点。こまめに補給する様に心掛けた。気持ち良く走っている時、そういう時はどんどん食べるようにした。補給食には、ひと口大のおにぎり、アメリカ製と思われるクッキーの様なエナジーバー。これは前回チェジュで使ってみて、パワーバーより食べやすいので今回も使ってみた。おにぎりは塩こんぶとゆかりで味付け。塩はたっぷり入れた。メインのエネルギー補給のためにフラスクに入れたパワージェル。塩分補給用にソルトスティックと宮古島のスポーツソルト。最後にセレッソの小林さんに用意してもらったツムラのつり止めの漢方薬。これらを背中のポケットとベントーボックスに分けて入れた。ジェットストリームにはOS-1。更にOS-1のパウダーも予備を持った。

 エイドステーションは15キロ毎に設置されていた。第1折り返し手前、第2折り返し手前、第3折り返し、そしてスタート地点に設けられていた。15キロというのはちょうどいい。折り返し付近という場所もちょうどいい。過ぎてしまっても、ちょっと頑張れば次のエイドにたどり着く。またトイレはエイド毎にある。エイド以外で用を足しているとペナルティが課せられる。これも徹底されていて、誰も路端でしている人は見掛けなかった。

 第2折り返しまでの間は森林の中、木がまばらに生えていて心地よい気分にさせてくれる。折り返し点はもう100m先はハイウェイという場所にある。右側にハイウェイらしき道筋が見えてくると折り返しも近いということが分かる。それもいい目印になっていた。下見の時に距離もおおよそ分かっていた。ここはおよそ34キロ地点。記録上は33キロ地点という事になっているが、私のメーターの方が正しい。これは実証済みである。帰りの道はそのまま来たコースを戻るが、左折して入って来たところはそのまま直進し、1キロほど先に行って折り返して街に向かう道路に戻る。この折り返しがおよそ45キロ地点、ちょうどエイドが置かれている。この辺りは路面も良く走りやすい。元のコースに戻った辺りから今度は追い風に変わる。気持ち良くスピードが上がる。2キロほど街に向かって走ると湿地帯に入る。この辺りは完全に追い風。周りには風を遮る物がないので風も強い。という事は、逆方向は向かい風になるという事。向かい風は辛い。

 下見でも走り、行きにも走っているので場所のイメージは出来上がっていた。あっという間に街まで戻ってきた。さすがに街の中は応援も多い。励みになる。スタート地点前の折り返しは、大きなアイアンマンのマーク。気持ち良くそのマークに向かって走る。1周60キロが終わった。自分の時計を見ると何とか2時間を切るくらい。まずまずのペースで走れている。

 バイクスタート地点のロータリーを回って再びバイクコースに出て行く。街から抜けると再び向かい風。1周目に比べるとだいぶスピードが落ちていた。風が強くなったか或いはもう力が弱ってしまったか。しかしそんな事は考えず、折り返しに向かって走るだけ。私は2周目、そんなところをトップの選手が抜いて行く。先頭は1人が飛び抜けていたが、その後に続く選手は、5,6人が連なっていた。みんな必死の様子。辛くても集団から離れられないだろう。第2折り返しの手前で、抜いて行った選手が再び連なって戻ってきた。みんな同じ様な体型、大きく力強くそして若々しい。

 私自身の順位などはよく分からないが、まだまだ後ろにもたくさん選手がいる。同じ横浜から来たYさんは、OSJのユニフォームを着ていたのですぐに分かった。とりあえずは私の後ろ15分くらいのところにいた。その他、日本人らしき選手は見掛けるが、誰だかは分からない。知っている人もいないので特に気にはしない。ただ、日本人は後ろの方に沢山見掛けた。

 2周目の第3折り返し、115キロ地点のエイドで2回目のトイレに入った。気持ちを入れ替えるのにもちょうどいい。最初のトイレは1周目の第2折り返しに向かうエイド、30キロ地点で用を足した。バイクスタートして1時間だった。ちょっと早いと思ったけど、催してくるのは仕方ない。まだ先は長く、我慢してもしょうがないので早々にトイレに入る。バイクではこの2回、タイムロスにはなるけれども我慢して走るよりはいい。

 スペシャルは2周目の30キロ地点のエイド。ここで1回だけ取れる。入れた物は最初に持った物と変わらない。OS-1、おにぎり、フラスクに入れたパワージェル梅味、クッキー。おにぎりは殆んど食べたが、クッキーはだいぶ残した。あとはベスパとレッドブル。レッドブルはバイクには欠かせない。

 2周目も街に向かうところ、1周目では追い風も強くかなり速かったつもりだが、だいぶペースも落ちていた。1周を2時間の目標でいたが、2周目で既に大幅にオーバーをしてしまっていた。2周目はおよそ2時間10分、そして3周目は2時間12分というタイムになってしまった。少々不本意なタイム。そして、後半は、DHポジションも完全には取る事ができず、向かい風になるような辺りでは、ハンドル先端部を持ってのライディングになってしまった。この辺りは自分でも少々納得の行かないところ。DHポジションで乗りこなしたいものだ。しかし、DHポジションでのフォームは写真を見る限りはなかなかいいイメージで乗れている。いい写真が撮れているのでフォームのチェックをして貰いたいところだ。

 2周目が終わった時点で4時間を少々オーバー。目標は6時間程度だが、その目標どおりにはいかない様だった。疲労も重なりだいぶ辛くなってきたが、残すはもう1周と思って走る。後ろから来る日本人の走りを見るとやはり辛そう。私の方がまだいい感じで走っている。それなら一層頑張らなければならないと思って風に負けない走りをする。スピードが上がらないのは風のせいと思ってスピードは無視する。ひとつひとつの折り返しを目指して頑張った。いちばん遠い第2折り返しを回って来れば残りは30キロも切ってくる。もうひと頑張りだ。

 帰りの森の中では時折雨も降って来た。そろそろバイクも終わりという頃なので、路面が滑らない程度に降って欲しいと思う。バイクゴールに向かう女性同士の戦いの中にちょうど入った。同じ様なナンバーを付けた女性が並んで走っている。みんな頑張っている。私もDHポジションはなかなか取れないが、頑張れる範囲でできる限りの事をする。最後に向かって私のペースも少し上がり、前にいた女性達も抜き去った。気持ち良くランに移る事ができた。

 バイクゴール地点でバイクをボランティアに預けて、再び着替えテントへ。テントの入口にランのトランジッションバッグが掛けてある。私の周りには半分くらいはあっただろうか。エイジ順に並んでいるのでまずまずってところか。テントの中に入って着替え。バイクジャージの背中のポケットに入っていた食べかすや食べ残ったものは全て出してからバイクジャージをしまう。ランニング用のスパッツにはき替えいつもの様に5本指ソックスを履く。つり止めの漢方薬、ベスパさらにカーボショッツも摂ってスタートへ向かう。トイレに行きたかったのだが、見当たらなかったのでそのままスタートして行った。

 暑い事は無いが日差しが強い。しっかりサンスクリーンは塗って貰った。トランジッションエリアを出て、最初はクイーンズ通りを走り、ゴール横を通り抜ける。海岸近くまで出たところで、海岸線に沿ってバイクコースとは反対の西の方に向かって走る。金曜日のバイクでの下見はこちらの方には走らなかった。しかし、おおよそ1キロくらいというのは、コース図で分かっていた。スタート地点から最初の折り返し点まではおよそ2キロくらいあるはず。海岸線の部分はランナーが対向して走る。向かいからはたくさんの人が走ってくる。まだ腕には1本も周回チェックを貰っていない人が多い。殆んどが私と同じくらいのレベルである。まだみんな元気で、私をパスしていくランナーもいる。私は特に無理して走るつもりは無いが、ランタイムの目標は4時間程度、10キロは1時間以内を目標にしていた。

 エイドはたぶん2キロ置きくらい。エイドが無くて困るという事は無い。最初の折り返しにもエイドがあった。折り返しの目標がエイドという感じ。エイドにはきちんとトイレが置かれている。スタートしてとりあえず最初のトイレで用を足す。まず1回目。すっきりして気持ち良く走れる。折り返した後は、元のコースを戻って、ジェッティ近くの公園を抜けて、そのまま海岸線のランニングコースに入っていく。ランニング専用道が海岸に沿ってできている。ランコースも勿論フラット。アップダウンなどというものは無くイーブンペースで走る事ができる。公園を抜けて行ってしまうと、木などは植えられていなくて日陰などは全く無い。しかし日差しは強いが暑いという感じはしない。やはり湿度が低いためだろう。

 ジェッティから東側はおよそ3.5キロの往復。こちら側は暫く走ると住宅街に変わる。きれいな新しい住宅が並んでいる。みんな思い思いの方法で応援してくれている。とても励みになり、元気が出てくる。

 走り出してすぐに小さい方の用を足したが、次第に腹が張ってきた。ガスがたまってきた感じ。レースではこんな事は良くある事。暫く我慢しながらトイレに行くチャンスをうかがう。

 折り返しまでの途中に、エイドが1ヶ所。そして折り返し地点にもエイドがある。折り返しのイメージはしっかりと憶えておいた。次に向かってくる時に少しでも楽な気持ちになれる。折り返しのエイドにはたくさんのボランティアがいた。みんな赤い帽子をかぶっていて、遠くからも良く目立った。クリスマスも近いので、みんなサンタクロースの様だった。

 折り返して再びジェッティを目指す。遠くの方に見えているのだが、案外近い。片道3.5キロだけに、それ程辛くもない。いつもの練習コースを家まで帰るようなものか。目標は常にジェッティである。

 ジェッティの付け根、大会本部のある公園まで戻ってきた。この辺りで10キロ。時計を見ると56分台、トイレタイムがあった割にはまずまずいいペースだった。気を良くして走る。公園の中に入るとスペシャルフードの案内もある。1周目はまだ要らない。2周目、3周目に取るつもりでいる。

 公園内、その先に公衆トイレを見つけた。ここぞとばかりに駆け込む。ガスが出て腹はへこんだ。やっと気持ち良くなった。これでこの先走れそうだった。しかしだいぶタイムロスをしてしまった。これでラン2回目のトイレ。

 トイレを出ると、その先がちょうど1周回ってきたところだった。バイクラックの周りをぐるりと回ると周回チェックポイントになっていた。やっと1本目のリングを貰う事ができた。最初は黒、3本目までは黒を貰う。そして最後の4本目はオレンジ。これを持っているとゴールに入る事ができる。まだまだ日は高い。暗くなる前にはゴールできそうである。

 周回も2周目に入り、自分ではいいペースで走っているつもりでいた。1周は10.5キロ。距離表示は出ているが、距離には関心が無かった。4周走ればいいという事しか頭に無かった。2周目の折り返しも過ぎた辺りか、左足のハムストリングがつりそうな気配が出てきた。つってしまってはそこでおしまい。漢方薬とは別に用意しておいたクランクストップ(実はオーストラリアに来てからエキスポで購入した)を使う事にした。どれくらいの効果があるかは分からないが使ってみる。ペースは落としてはいないつもりだったが、つるのが心配で確実にペースは落ちていたのだろう。自分ではキロ6分ペースくらいで走っているつもりだったが、実際にはそうでは無い様だった。その時、やはり走り込みが足りなかったのだと自分で納得した。そして大いに反省をした。月間150キロくらいでは十分と言えなかった。やはりもう少し走っていなければならない。マラソンの練習が必要だった。

 2周目もそろそろ終わり、再び公園に戻って来てスペシャルフーズポイント。ゼッケンを見せて私のスペシャルを出して貰う。今回用意したものは、OS-1、ベスパ、カーボショッツ、そしてレッドブル。2周目ではレッドブルを1缶とベスパ。OS-1は3周目に飲む事にした。元気を付けて残り半分に向かった。エイドでパワージェルが提供されていたので、カーボショッツは必要なかった。実はレッドブルはこちらに来てから買ったもの。ホテル内の酒屋でビールを買っている時に、カウンターに置いてあるのを見て気が付いた。いつもは日本から持ってくる物をすっかり忘れていた。しかしその時に気が付いて良かった。レッドブルはスーパーなどにも大量に売っていた。日本の小さいサイズなどは無く、日本の大きいものがこちらの普通サイズ、更に大きいサイズもスーパーの棚には並んでいた。

 乾燥しているから汗が出ないのか、或いはすぐに乾いてしまっていたのか、あまり汗が出ている感じは無かった。だからなのか、トイレが近かった。西側の折り返し地点のトイレ、結局3周目も4周目もここのトイレに入った。その度にたくさん出た。すっきりして走り出す。タイムが遅かった分は、ここにもそのロスタイムが含まれているという事にする。

 3周目は淡々と走る。手には2本のリング。2本貰っているランナーはたくさんいる。3周回ってしまえば残るは最後の周回。少しは張り合いが違う。ペースも少しは上がる。日はまだまだ上の方。暗くなるまでまだまだ時間は十分ある。そんな事を思っていたからか、確実にペースは落ちていた。4周目の最後の折り返しを回って38キロ辺り、その時既に4時間は過ぎていた。自分でも時計を見て驚いた。まさかこんなタイムで走っているとは思ってもみなかった。

 今回は10キロで時計を見た後は、その後一度も時計を見なかった。率直なところ、他に競う知り合いも居ないし、ハワイを狙うタイムでも無し、気持ち良く走るつもりだった。しかし、こんなに遅いつもりは無かった。やはりショックだった。だが結果がこうなっているのだから仕方ない。最後まで気持ち良く、一生懸命走るしかない。もう最後だと思うと少しはペースも上がる。

 ジェッティがだんだん大きく見えてくる。そろそろ公園も近づき、フィニッシュラインももうすぐ。最後のエイドで水を貰い体を冷やす。身支度も整えてゴールを迎える準備をする。やっと最後の周回チェック。黒いリングを3本見せて、最後のオレンジ色のリングを貰う。これでフィニッシュに向かう事ができる。トランジッションエリアの周りをぐるりと回ってクイーンズ通りへ出る。フィニッシュラインはもうすぐ。後ろからも誰も来ないのを確認する。最後の花道ではみんな手を出して祝福してくれる。こちらもゆっくり走ってそれに応えて手を出す。長く掛かった分喜びも大きい。12時間30分を超えてしまっていたけれども、フィニッシュには変わり無い。みんな大きく祝福してくれた。嬉しいゴールだった。大きく手を上げてフィニッシュラインを跨いだ。

 フィニッシュ後の対応も嬉しかった。サポーターがしっかりフィニッシャーエリアまで付き添ってくれた。しきりに話しかけてくれて、体を気遣ってくれる。こちらも拙い英語で対応する。冗談も軽く出る。マッサージのところへ案内してくれてすぐにマッサージを受ける事ができた。暫くはマッサージに身を委ね楽になった。

 マッサージの後はシャワーを浴びて汗で汚れた体をきれいにした。食事が出されていたがあまり食べる気にならず、アイスクリームとピザ2切れだけにした。うどんでも欲しいところだった。まだ明るい中、そのまま疲れた体でバイクをピックアップし、部屋に戻ってきた。とりあえず私のレースは終わった。

 レース後もやらなければならない事はたくさんある。まずは汚れたものの洗濯。風呂場でみんな洗う。夜中のうちに洗ったものは次の日にはみんな乾いていた。後片付けも楽だった。片付けをしながら美味しいビールもたくさん飲む事ができた。当然ゴールのご褒美はビールだろう。そして最後はカップヌードル。やっぱりビールとカップヌードルは欠かせない。

 ホテルからゴール地点までは数100mの距離。暗くなってからもまだまだフィニッシャーはたくさんいる。フィニッシャーの祝福のアナウンスが良く聞こえる。ゴール地点のそんなざわめきを聞きながら、ビールを飲みテレビを見てくつろいでいると、そのうち寝入ってしまった様だ。


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(No.546)


  
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