第19回全日本トライアスロン皆生大会
1999年7月18日 日曜日 天候:雨のちくもり
種目:Swim 3Km、Bike 140Km、Run 42.2Km
記録:9時間44分00秒 182位/602人
| Swim | 57:14 | (196位) |
Bike | 4:58:50 | (211位) |
Run | 3:47:56 | (168位) |
■7月17日(土)
昨年と同じ米子行き第1便、よく考えるとやはり早い。もう少し遅いといいのにと思いつつ、羽田空港に向かう。羽田発7時15分米子行き、そんなにみんな米子に何しに行くのかと思うくらい人がいる。同じ目的のトライアスリートも見うけられる。天気は悪くなさそうだし、今年も暑くなりそうだ。いちおう梅雨時ということもあり雨をしのぐものは持ってきたが、雨が降るなどということは全く考えていない。やはりトライアスロンは暑い陽差しのもとでやらなければ。
米子も昨年ほどではないが暑い。海も荒れていなく、今年はちゃんと3種目できそうだ。乗り継ぎもスムーズで、10時頃には宿に到着、さっさとバイクを組み立てる。こんなに早く来ているのは東京組くらいで宿の中はガラガラ。我がもの顔で荷物を広げゆっくり組み立てる。バイクを組み立てていて忘れ物ひとつ、『ジェットストリーム』を忘れていた。頭に全くうかんでいなかった。人のバイクを見て初めて思い出した。ま、涼しそうだからいいか、それで済ます。
昼食の時間に合わせて車検を済ませる。特に変わったところもなくすんなり終了。昼食のあとは軽く海水浴。今年は泳げそうだ。4時から受付、説明会。今年もユニークな市長のあいさつに始まる。5時半には終了。宿へ戻り温泉につかってひと休み。6時頃から雨が降り出す。にわか雨だろうと軽い気持ちでいる。昨年もそうだったが、このあたりはよく雨が降る。夕食が済んでしまえばあとは寝るだけ。9時前にはしっかり床についていた。
■7月18日(日)
睡眠も十分、4時に起床。外からいやな音が聞こえる。どうやら昨日の雨が降り続いているようだ。雨の調子からすると、雨の中のレースを覚悟しなければならないようだった。特別準備しなければならないものもなく、する事が済んでしまえば、あとはしばらくのんびり。慣れたというのか、緊張感が無いのか、スタート前のイメージトレーニングもしない。好ましいものではない。雨のレースを覚悟し、雨具を着込み、傘をさし、荷物を持って宿を出る。傘もささずに出かけてくる者もいれば、しっかり雨対策をしている人もいて、人様々、準備だけはしっかりしていた方がいいに越したことはない。
会場まで300m程、近い宿にしておいて良かった。オロロンなどでは、雨が降ってしまうと荷物が大変、本当に憂鬱になってしまうが、皆生ではそんな事は一切無かった。バイクが途中濡れるくらいで、他に心配ごとは全くなかった。タイヤの空気圧は雨のため、昨日入れたまま、チェーンには油をたっぷりかけておいた。バイクをセットし、トランジッションバッグを置いてしまえば、あとは何もする事はなかった。体育館でストレッチをし、スイムの準備をする。
ウェットを着込み、6時半にスイム会場へと向かう。徐々に緊張感が高まっていく。これがたまらなくいい。やはりスイムがスタートでなければトライアスロンではない。初めての皆生スイムスタートの間口は50m程か、やや狭いなとは思うが、とりあえずは軽くアップをする。だんだんわくわくしてくる。最近スイムの調子も上がっていて、不安感などは無いが、やはり緊張してくる。あの市長の軽口も飛び出して、緊張感も和らぐ。さすが、なかなかのものだ。
7時ちょうど、降り続く雨の中、勇気あるトライアスリートはその一歩を再びしるした。19年前、国内では未だ経験の無い世界へ、53人が一歩を踏み出した。その勇者達の後を追い、私は海へ向かった。
土曜日の昼食後、昨年とは全く変わり、凪のような海で少しの間、海水浴を楽しむ。昨年は何の様子も分からぬまま、日本トライアスロン発祥の地で大荒れの海に弄ばれただけだったが、今年はしっかりと自分の意志で日本トライアスロンの先駆者を讃える碑の前にいた。日本の勇気ある53名がいなければ、今のこのトライアスロンは無かったかもしれない。そう思いながら、石碑に刻まれた名前を1人ずつ追った。
いくら水泳に不安が無いとはいえ、1人で泳ぐものでもなく、まわりに調子をあわせつつ、最初のターンポイントを目指す。スタートからの距離が短いだけに、まるで網にとらえられた魚のように、水しぶきを上げながら泳いでいる。この中に入ってしまったら、もうどうしようもない。あわてず、騒がず、流れに乗っていくしかない。まずは最初のブイまで行くこと、それからが勝負である。
人にもまれながらも何とか一つ目のブイを曲がり岸に沿って泳ぎ出す。いつものように、なるべく人のいないコースロープから離れた所を泳いでいる。じゃまされることは少ないが、人の流れに乗ることもない。1キロがどの位なのか分からないが、なにしろ先にある折り返しを目指して泳ぐ。雨に曇って、はるか前方にアドバルーンが揚がっているのが見える。往きは流れがあるからか結構泳ぎやすい。波もうねりもなく、プールで泳いでいるような気になってくる。
もうそろそろ折り返しに近づいたかと思う頃、「1」の旗を付けたカヌーが反対方向に行った。続いて「2」もいた。どうやら先頭集団を追うカヌーなのだろう。たぶん5分くらいの差だろうと思いつつ、もう少し先の折り返しを目指す。
折り返しのブイは見やすい。やや人の混み合う中を折り返し、半分来たコースをゴールへと向かう。それまでと特に変わりなく半分くらい過ぎると、急にうねりが出てきた。だんだん大きくなり、体も持って行かれる感じになってきた。ペースも落ちてしまった様だった。スタート/ゴール地点のすぐ横に日野川の河口がある。この影響で、帰りはいつもきついらしい。うねりもこのためだろうか。なかなか進まず苦労しながらも、人のあとに付いてゴールを目指す。
最後のブイを右に折れて正面にゴールゲート。往きと帰りとではこれほど違うかと思いながら最後の力を振り絞ってゴールへ向かう。本当になかなか進まない。最後になってクラゲも出てきた。刺されないようにと願いながらスイムフィニッシュ。正面の時計を見ると57分を過ぎたところ、もう少し期待したが残念だった。次は問題のバイクと思いながら、雨の降る中トランジッションへ向かう。
まずバッグ置き場で着替えを済ませてしまい、それからバイクラックへ向かう。まだバイクが大分有るではないかと思い、バイクをスタートさせる。結局200位くらいには入っていたが、最近の自信からすれば、もう少し良くても良さそうだ。オロロンでは、是非100番程度を目指したい。
バイクコースは2度目だ。練習不足もあり、決して飛び出していく様なことはしない。人に置いて行かれなければいいという気持ちで走っていた。ほとんど練習会の気分である。雨ということもあり、コーナーでは更に気を付ける。田舎の町の中でもあり、コーナーも多い。昨年、コーナーで車に突っ込んでいるのを見ているだけに十分注意。車の多い交差点では、かなり手前から車を止めてくれていて感謝する。雨の中、規制をしてくれている人にも協力してくれる人にも感謝である。そのためにも精一杯のレースはする。しかし、どうも坂道になると徐々に前から離されて行く。マーシャルが時折やって来るのだが、私はいつも集団の最後方を少し離れて走っているのでこちらは安心。ドラフティングをするほど前に付いていけない。
雨は降り続いているが風がないのは幸いである。バイクジャージだけでは不安と、ウィンドブレーカを持っていたが、これは使わずに済んだ。寒さは感じられなかった。しかし、暑くもないので数有るエイドにも殆ど用は無かった。早いうちから補給だけはとっておこうと、ボトル、スポンジ、バナナなどが差し出される中から、バナナを何度か貰っていく。他には、おにぎりをひとつ、それくらいだったか。おいしそうなメロンは取り損なってしまった。
自分で用意したのはカーボショッツと一口ようかん。前日、固形物を何も持って来なかったことを思い出し、コンビニで良さそうな物を探す。ヤマザキの「磯辺餅」が希望だったが、あいにく無く、反対に甘い羊羹が見つかった。ちょうどTJにも載っていたばかりなのでいいだろうと準備した。今回、いくつも忘れ物をする中、ラップだけは持ってきたので、2つに分けて食べ易くする。小倉羊羹はお勧めだ、次回も使えそう。カーボショッツの方は袋から小さなボトルに詰め替える。7袋くらい入ってしまった。足りなくなることを予想し、袋のままも3つほど用意する。結局これは全部とってしまった。しかし、ミニボトルは反省がいくつか。ウェストバッグに入れていたので、取り出すのは同じだが、もう一度しまわなければならないことに気が付いた。もう一つ、横にしてあるので少なくなるとすぐに出てこない。結局、一袋分位は中に残ってしまった。
登りの多いコースの中、最初の難関が大山の登りである。昨年は、このあたりまで頑張ってきて順位を上げてきていたが、今年はすでに抜かれてきている。6キロ程ある大山の上りでも、何人かいいペースで抜かれていく。追うことなどは全く考えず、マイペースを保つ。ここで競っても仕方ない。まだまだ始まったばかり。2度目という事で、コースも判っていて、少しは楽である。アスレチックが見えてくると最初の登りも終わり。でも、まだ上りはしばらくある。それが終わらないと、長い下りにはならない。その前にエイド、一休みのつもりでおにぎりを貰う。それから気合いを入れて山を下る。
雨は降っているが、それほど強くはなく、走りには影響がない。がんがん飛ばす。下りはいいが、ぼちぼち皆生のバイクの売り物が始まる。下れば上り、上ればすぐ下り、延々と続く。再びこのあたりに戻ってくるまで、平坦なところは無い。これは堪え忍ぶしかない。昨年は何しろ抜かれ続けたので、それだけは避けたい。一人だけの速いペースに抜かれるのは仕方ないとしても、集団で抜かれるようなことはごめんである。
補給も、坂の合間をねらってこまめに取る。アップダウンも最初の頃より楽になったあたりか、ひとり速い女性が抜いていく。何だと見ると、ゼッケン「1」、なるほどこれが松本晴美かと感心する。極端に速いわけではないが、確実に前を捕らえ、少しずつ離れていってしまった。上半身もふくらはぎも細いのだが、太ももの太いこと、これだけは印象に残った。
折り返し点はおよそ90キロあたりのはず。トップグループの素晴らしい走りとすれ違ってからは、後続がぽつりぽつりとやってくる。入り組んだコースを何回か曲がると対向者と自分のどちらが先にいるのか分からなくなってくる。昨年とはコースが変わっていたようだった。昨年は無かったUターン地点が今年は畑の中に設けられていた。松本晴美も少し前に折り返していった。
雨も小降りとなり、体力もまだ余裕がありそうだった。フロントはインナー、リアも上から下まで目いっぱい使っていた。今年はごぼう抜かれにはならなそうだった。山間部から街中に戻ってきて、ラストスパートのつもりでしっかり漕ぐ。しかし、スピードはやっと30キロ、それ以上はなかなか上がってくれない。向かい風も少々あったか。ずっと目標にしていた王子製紙の工場を過ぎれば、ゴールももうすぐ。
今年は最後まで良く走れたと、自分をほめてやる。雨もいつの間にか上がっており、ランも気持ち良く走れそうだ。バイクパートもなんとか5時間を切れ、トータルでも6時間を切れている。フィニッシュでも10時間は切れそうなところまで来た。応援は数多くはいないが、地味な皆生のバイクゴールゲートへ右折する。バイクの数も、まんべんなくぱらぱらある感じ。それほど遅くはなさそうだ。
雨でどろどろになった足をきれいに拭き、腰を下ろしていつもの5本指ソックスを履く。曇っているので何時頃かよく分からないが、もう夕方のような感じもする。さすがに、体が軽いとまではいかないが、あと4時間程でゴールはできそうだ。
軽く走り出すが、一緒に出ていくランナーが皆速い。涼しいだけに、よたよたしているランナーなどいない。うかうかしていると、置いて行かれてしまう。無理しない程度にしっかり走る。皆生のランコースは基本的に歩道を走る。信号があったら守らなければならない。昨年は、運がいいのか実力か、ほとんど止められる事はなかった。しかし、今年はいきなり最初の信号で止められてしまった。後ろを見ると、ミニパトが止まっている。さすがに警備員もそれは見逃してはくれなかった。止まってしまったら仕方ないと思い、カーボショッツをゆっくり取る。
コースはしっかり頭の中に入っているので、コースの不安はない。皆生温泉を抜けると、しばらくは街中を通る。信号も数多く、やはり何度か止められる。信号で止められて必然的に集団になってしまうが、皆速い。このまま行けば途中でつぶれてしまいそうな位のペースである。たまらず、エイドで一休みし、集団から離れる。あとはマイペースで行く。
10キロあたりまでは50分くらいで走る。だんだん調子も出てきて、気持ちよく走れる。涼しいが、体温は上がり、帽子に氷を入れて頭を冷やす。このへんは、陽が差していなくても、いつもと変わらない。広報車がやってきて、先頭が来るのを知らせている。誰が来るかと思っていたら、井出晋一、走りが素晴らしい。思わず声をかける。しばらく間があき、藤原裕司、切れのある走りとは思えないが、速いのだろう。次は昨年2位だったアラコの鈴木、今年も夫婦で出ているらしい。背は小さいがかっこいい。あと続々とやってくる。トップグループを行く者は皆かっこいい、うらやましくなる。どうやったらあんなに速くなるのか、練習か、天性か....。
空港の手前には陸橋、昨年はずいぶんきついと思ったが、今年はどうって事もない。オロロンの坂から比べれば、こんなものは平らな方だ。50mも行けばもう下り、その他は真っ平らである。エイドでも氷水とコーラを貰うくらい。そろそろ20キロというエイドで少し休んでスイカを食べていたら、カメラが寄ってきた。よっぽどうまそうに食べていたのだろうか、一言、二言交わし、すぐに出ていく。残念なことに、皆生ではビデオは売っていない。自分の姿は見られそうにない。
折り返しは境港三中、昨年はやっとたどり着いた感じだったが、今年は違う、まだまだ余裕。しかし、昨年折返し後に抜かれた小椋よう子は、もうとっくに先に行ってしまっていた。女子トップは、神奈川県推薦・招待の堀陽子、一人おいて松本晴美がいた。堀さんのトップには驚いた。ひと声かける。なんとか優勝して欲しいと思う。
折返し後も調子は変わらず、たんたんと歩を進める。なんとか目標の、昨年の30分プラスの9時間45分くらいでゴールできそうな目途もたってきた。マラソンも、初めての40分台が出そうである。しかし、皆生のマラソンの記録は、スタート時に計測、トランジッションは入っていない。でも、これもひとつの記録だ、そう思って納得する。
唯一の歩道橋を渡ると、そろそろ市街地に入る。もう少しと思うと、ペースは上がったような気もするが、時計を見ると全く変わっていない。気持ちだけハイテンションになっているわけだ。ここでも何度か信号に止められる。止まっているのはいつも同じメンバーだが、やはりそこは、先を走るランナーに道を譲る。皆マナーを守り、気持ちよくゴールに向かう。自然にか、前とのスペースも同じような間隔になっている。
3キロから残り表示が出てくるが、それが長いか、短いかよく分からない。とりあえず、あと15分、10分としか考えられない。あと1キロの表示を過ぎ、フィニッシャーズストリートの直線に出る。あとはマナーの悪いやつが急に出て来ないことを願うだけ。幸い、私のまわりにはいない様だった。私の泊まっている宿を過ぎると、赤いじゅうたんの敷かれたフィニッシャーズロード、身繕いし、気持ち良くゴールインする。長い一日がやっと終わった。充実感が溢れてくる。ほぼ目標どおりのフィニッシュができた。
体育館の周りには、応援や完走者でいっぱい。その中に自然ととけ込んでいく。サービスのラーメンの列を見ると、急に腹が減ってきた。フィニッシャー優先なので、並んでいる列を横目に、出来上がりを横取りしていく。お世辞にも旨いとは言えないが、フィニッシャーラーメンとしては十分だった。あとは体育館でマッサージ、一休みしてからシャワーを浴びて宿へ向かった。
夜になると再び雨が降り出してきた。皆生は10時までゴールが開かれている。ぽつり、ぽつりとしか帰ってこないフィニッシャーを、みんな待ってくれている。バイクで折り返してからだいぶ経っているのに、走ってくる選手がいた。そんな人が今は必死で走っているのだろうと、気持ちを思いやる。ゴールではみんな待っているから、最後まで走り切れ!そうとしか言ってあげられない。みんなフィニッシャーだ。
■7月19日(月)
9時から閉会式、昨晩バイクのパッキングも終了していたので、早起きする必要は無し。のんびり寝ているつもりだったが、6時半には目が覚めた。荷物のかたづけを済ませ、8時半頃会場へ向かう。どこの大会でも同じように、写真を買っておしまい。そのあとは、自分とは縁のない表彰式が始まり、そして最後に完走パーティ。さすがにやり慣れているだけあって、スピーディである。ビールも料理も十分用意されていた。抽選会にも縁はなく、11時前には閉会式も終了。
今年は、飛行機は最終便を予約していた。それまでどうしようかと考えていたのだが、高校生の頃 --今から30年近く前のことになる-- 行ったことのある松江に行ってみることにした。松江城と市内観光が目的だった。もう一つ、松江といえば蕎麦。タクシーのドライバーにうまい蕎麦屋を教えられた。武家屋敷の並びにある八雲庵、評判どおりの味だった。来年は皆生20回大会。定員も増えるらしい。皆さんでうまい蕎麦を食べに行きましょう。
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